上場企業の事を分かりやすく把握する読みやすい資料

ビジネス

上場企業の事を分かりやすく把握したければ読むべき資料【解説あり】

2022年1月15日

初めまして、あおあかです。

突然ですが皆さんは上場企業についてどういった印象をお持ちですか?

別に興味のない人、なんとなく上場=大手、信頼度が高い。

といったざっくりしたイメージを持たれる方が大半なのかな。と思います。

実は私たちの日々の生活の中であの商品も!?このお店も!?みたいに知らないところで上場企業と深く関わっていたりします。

私は上場を目指す未上場企業のIPO推進部といったところで働いており、上場している会社のあらゆる事を常に考えながら仕事をしています。

これから就活を控えているけど上場企業について知りたいな。上場するような会社の事業内容ってどんななのかな。といった疑問に分かりやすく答えられればと思います。

  • 上場企業ってなに?
  • 日本には、275万社以上の法人があると言われています。(出典:国税庁「令和元年度分 会社標本調査」)倒産する会社、新たに設立した会社等、日々動きがありますがここ数年は毎年緩やかに純増が続いております。

    275万社以上の会社がある中で、現在(2022年1月13日現在)3,823社が上場しております。(プロマーケットを含む東京証券取引所の上場企業数)

    実は新規で上場する会社の事をIPO(Initial Public Offering)というのですが、2021年は125社と14年ぶりに100社を超えたと話題になりました。

    毎年100社に届かないくらいの会社が新規で上場しております。その「上場企業」というのは、簡単に申し上げますと、東京証券取引所のような「証券取引所」に株式を公開し、一般投資家でもその会社の株式を自由に売買できるようになることを言います。

    詳しくはまた後日、解説できればと思いますがこの上場審査が非常に厳しく、どこの会社でも上場できるわけではありません。

    上場した後も自分の会社の業績や将来の業績見込み等、様々な情報をタイムリーに開示していかなければなりません。それはそれで大変なのですが、株式を発行してお金を大多数から集めているので株主に向けて開示するのは当然ですよね。

    その開示情報は投資をしていない一般の方も見ることが可能です。ただ、正直一般の方が漫画や雑誌を読むように開示資料を読むことってないですよね。私も読む機会は多々ありますがあまり楽しい資料とは思いません。ある資料を除いては、、、

    事業計画及び成長可能性に関する説明資料

    基本的にはあまり読む機会のない開示資料ですが、「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」という資料があります。

    企業の今後の動向やビジネスモデル等がグラフや図表を用いて分かりやすく記載することが東京証券取引所より求められており、非常に見やすく分かりやすい説明資料となっております。

    現在東証では、2022年4月に市場区分の再編を予定しており、少し分かりにくくなっていますが、今でいうところの「マザーズ市場」に上場している企業にこの開示が求められています。

    4月からは「グロース市場」がそれにあたる市場です。その他にプライム市場、スタンダード市場というのがあるのですが、グロース市場には高い成長可能性が求められていることから、それを実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が求められているのですね。

    企業やビジネスモデルによってそれぞれ記載されている内容は違いますが、主に記載すべき内容は下記の通りです。

    項目主な記載内容
    ビジネスモデル・事業の内容
    →製商品・サービスの内容・特徴、事業ごとの寄与度、今後必要となる許認可等の内容やプロセス
    ・収益構造
    →収益・費用構造、キャッシュフロー獲得の流れ、収益構造に重要な影響与える条件が定められている契約内容
    市場環境・市場規模
    →具体的な市場(顧客の種別、地域等)の内容及び規模
    ・競合環境
    →競合の内容、自社のポジショニング、シェア等
    競争力の源泉・競争優位性
    →成長ドライバーとなる技術・知的財産、ビジネスモデル、ノウハウ、ブランド、人材等
    事業計画・成長戦略
    →経営方針・成長戦略、それを実現するための具体的な施策(研究開発、設備投資、マーケティング、人員、資金計画等)
    ・経営指標
    →経営上重視する指標(指標として採用する理由、実績値、具体的な目標値など)
    ・利益計画及び前提条件
    →(中期利益計画を公表している場合)その内容及び前提条件
    ・進捗状況
    →前回記載事項の達成状況、前回記載した事項からの更新内容、次に開示を行うことを予定している時期
    リスク情報・認識するリスク及び対応策
    →成長の実現や事業計画の遂行に重要な影響を与えうる主要なリスク及びその対応策

    エニタイムフィットネスジャパンの事業計画説明資料

    「マザーズ市場」に上場している企業が必ず開示しておりますが、ここでは僕が愛してやまないエニタイムフィットネスを日本展開している「株式会社Fast Fitness Japan」の説明資料を参考に説明していきます。(笑)

    「株式会社Fast Fitness Japan」は2020年12月にマザーズ市場へ上場を果たしました。その際に計36ページの説明資料を開示しています。上記の主な記載内容に沿ってどのような事が書かれているか見ていきましょう。

    株式会社Fast Fitness Japan IRニュースより引用

    ビジネスモデル

    株式会社Fast Fitness Japanは、Anytime Fitness,LLCとマスターフランチャイズ契約を締結し、エニタイムフィットネスの日本における独占的及び優先的使用権、運営ノウハウを有している事がわかります。

    その権利に基づきエニタイムフィットネスの運営を行なっており、日本における24時間フィットネスでのシェアNO1という特徴も書かれています。

    ビジネスモデル

    ここで、エニタイムフィットネスの許可の内容や収益構造が分かります。

    また別ページには、創業10年で全国47都道府県に出店し、2020年9月末時点で829店舗に及ぶ事業展開、会員数も55万人に達していることが図を用いながら記載されています。

    地域出店数
    北海道10店舗
    東北36店舗
    関東370店舗
    中部103店舗
    関西173店舗
    中国32店舗
    四国14店舗
    九州・沖縄91店舗
    合計829店舗

    エニタイムフィットネスの特徴として

    1. 会員の男女比は約男性75%、女性25%
    2. 損益分岐の低い店舗モデル
    3. ストック型のビジネスモデル

    が上げられています。

    1については若年層の需要を掘り起こし、40代以下が約9割を占めています 。(2019年12月末時点)

    2については店舗面積は80~120坪が中心の小商圏で成り立つビジネスモデルという事です。

    3については少人数・短期集中型のパーソナルジムと異なり、定額の会費を多数の会員様から頂くことで安定的にキャッシュが流入する特徴があるという事です。

    また利用者からすると、

    1. 24時間いつでも通い放題
    2. どこの店舗もマシンジムに特化していて別店舗も行ける
    3. トレーニングシューズを別で準備しなくても土足で行けるしとにかく低価格

    といった特徴がエニタイムフィットネスにはあります。

    市場環境

    下記ページでは、国内フィットネス市場規模やエニタイムフィットネスの成長推移、市場規模が記載されています。ここで、具体的な市場規模やエニタイムフィットネスのポジショニングが分かりますね。

    市場環境

    世界のフィットネス人口の傾向と日本のフィットネス参加率を比較して、今後の成長余地の大きさにも触れています。

    まだまだ日本のフィットネス業界は伸び率に余地があるという事が発見できました。

    競争力の源泉

    これはエニタイムフィットネスの特徴とも言えるかもしれませんが、競争力の源泉として、オーナーにとって魅力的な事業モデルという事が、この「成長可能性に関する説明資料」で書かれています。

    マシンジムへの特化と無人化が可能となる24時間ビジネスモデルを実現した事で

    1. 初期投資・ランニンコストを大幅に削減
    2. 人を多く配置しなくても店舗運営が可能(大手警備会社と連携)

    を可能とし、驚異的な出店スピードとなっています。

    「成長可能性に関する説明資料」を開示した直近(2020年9月末時点)時点で829店舗の展開をしているとお伝えしましたが、最新(2021年9月末時点)では951店舗まで拡大しています。

    店舗数が成長における重要なファクターであることは分かりますが、1年で純増122店舗は驚異的です。

    単純計算で3日に1店舗が増えている計算ですね。このスピード力には本当に驚かされますし、店舗数の増加に比例して売上高や利益も順調に伸ばしている企業です。

    事業計画

    非常にハイスピードに拡大を続けていますが、今後も積極的に出店をしていく計画であることが分かります。

    事業計画

    また、出店の戦略として

    1. フィットネス空白地帯に出店し、エリアを制圧(まずは直営店が出店し、集客実績を示してFC店の出店を誘引)
    2. 競合店が出店済の後発地域では、ブランド力で会員を獲得(グローバルブランドと適度な距離感での接客による店舗運営)
    3. ドミナント出店により、会員の利便性を高めるとともに、他社の出店を牽制(ブランド認知の向上により、集客にも貢献)
    4. 既存店エリアへの新規出店による顧客の囲い込み(既存店の混雑緩和と店舗の相互利用により、顧客満足度を向上)

    といった事を掲げて実際に店舗数を増やしています。中長期的にもこの事業計画を実践していく事で新規出店・会員獲得により、増収増益を目指していきます。

    リスク情報

    ここまで、成長スピードや規模拡大等の話をしてきましたが、あくまでこの時点では計画であって遂行していくにはリスクももちろんあります。

    この開示資料の提出が義務付けられているマザーズ市場(2022年4月以降はグロース市場)のコンセプトは下記の通りです。

    高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場

    ここからわかる通り、他の市場よりも投資リスクが高いという事です。そこで、リスク情報の記載も求められており、エニタイムフィットネスでは、特に

    1. マスター・フランチャイズ契約に係る主なリスクについて
    2. その他、弊社の事業に関わる主なリスクについて

    の2点を記載しています。1については、当初の契約期間が2025年6月9日までとなっていることや、エニタイムフィットネス以外の事業や物品販売又は役務提供を行うためには、Anytime Fitness,LLCの事前の許諾を要すること等、の条件が定められています。

    同社との契約の継続に支障を来す要因は発生しておりませんが、将来、事業の継続が困難になる可能性や、当社グループの事業戦略において制約を受ける可能性があるので引続き良好な関係を維持するよう努めていく。という事が書かれています。

    このリスクが顕在化した時、当初の計画通りには進むことはなく、成長の実現や事業計画の遂行に重要な影響を与えうるリスク及び対応策が分かりますね。

    この事業等のリスクですが別の資料では市場に限らず上場企業全てが記載しており、そちらに詳しく記載されています。

    まとめ

    今回は、エニタイムフィットネスを日本展開している「株式会社Fast Fitness Japan」のビジネスモデル、市場規模、競争力の源泉、事業計画、リスク情報等が記載されている「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」を用いて企業を紹介しました。

    経済は日々動いているので開示してからもどんどん変化をしていますが、ホームページを見ただけでは分からない有益な情報がたくさん書かれているので、ぜひ興味のある上場会社でこの資料を開示していれば見てみてください。企業のIRページにも開示されますし、東京証券取引所が運営する適時開示情報閲覧サービスにも日々、開示されていきます。

    ぜひ、こういった資料を用いて企業の今後の成長や自身の成長のためにも活用してみてください。

    -ビジネス