はじめまして、あおあかです。
コロナ禍で大変厳しい状況に置かれている飲食業界。
リンガーハットも例外ではありません。
2021年2月期のリンガーハットの通期決算は売上高が34,049百万円(△28.0%)、経常利益△5,561百万円、当期純利益△8,746百万円と創業以来過去最大の赤字幅となりました。
そんなリンガーハットですが個人的には、学生の頃バイトしていた事もあって今でも応援している大好きな企業の1社です。
サービス産業生産性協議会が発表した「外食チェーン顧客満足度」(日本版顧客満足度指数)調査で4年連続1位を獲得したり、みんなに愛されるリンガーハット。
そんな会社の様々な推移を見ていきましょう!
リンガーハットとは?
リンガーハットは長崎ちゃんぽん専門店の「リンガーハット」、とんかつ専門店の「とんかつ浜かつ」の運営や、グループ外食店舗のメンテナンスなどを手掛ける会社です。
主力の長崎ちゃんぽん事業では国内に600店舗前後展開し、長崎県の郷土料理であるちゃんぽんや皿うどん等を提供しています。
「長崎ちゃんぽん」という分野で競合チェーンがいないのも大きな特徴ですね。「ちゃんぽん」といえば、まずリンガーハットを思い浮かべる人が大半ではないでしょうか。
リンガーハットは1962年に長崎市鍛冶屋町にとんかつ浜勝を創業しました。実は第1号はとんかつからスタートしています。
その後、1974年に「長崎ちゃんめん」(現・「長崎ちゃんぽん」)及び「ぎょうざ」を主力商品にしたチェー ン店の第1号店を長崎市に開店。
1979年には 関東進出を果たします。首都圏1号店となる「リンガーハット大宮バイパス与野店」を埼玉県に開店し、ここで「長崎ちゃんぽん」の名を一躍 全国区に押し上げました。
1985年にリンガーハット100号店が開店、同年10月に福岡証券取引所に株式を上場しました。
現在は東証1部上場企業の創業60周年を迎えた歴史ある外食チェーンという位置付けです。
リンガーハットの独自ビジネスモデル
歴史ある外食チェーンのリンガーハットですが、長崎ちゃんぽんを売りにしているライバル企業がいない。という特徴を持っています 。
これがリンガーハットから私たち消費者へ商品が届けられるまでの事業系統図です。
ちゃんぽんは多くの野菜を使用する点で、健康志向の高まりもあって支持されていますがその反面、天候などの影響による仕入れ価格変動リスクが存在します。
これが1つの参入障壁となっています。リンガーハットは、日本全国の農家と契約を結び、仕入れ価格高騰リスクを軽減していますが、有価証券報告書の事業等のリスクにも原材料の仕入れについて記載されています。
原材料の仕入について
リンガーハット 有価証券報告書「事業等のリスク」
当社グループが、お客さまに提供する商品の食材等は多種多様にわたるため、疫病の発生や天候不順等により、必要量の原材料確保が困難な状況が生じたり、仕入価格が高騰したりする可能性があります。
また、「おいしさ」「安全・安心・健康」を達成するため、平成21年4月に国産米粉を使用したぎょうざの販売、平成21年10月より野菜の全量国産化、平成22年1月よりちゃんぽん麺の小麦国産化、平成25年10月よりぎょうざの主要材料の国産化を開始しております。食材の仕入に当っては、国内農家等との長期契約の締結等により仕入価格及び仕入量の安定化を図っておりますが、災害、天候不順、疫病の発生等により、必要量の原材料確保が困難な状況が生じる、又は仕入価格が高騰する等の事態に発展した場合、当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
国内農家等との長期契約の締結等により仕入価格高騰リスクを軽減するだけでなく、リンガーハットでは2009年10月より全店で、野菜を100%国産化いたしました。
そしてセントラルキッチンからの一括配送で、電磁調理器のシステムの導入により包丁を使わず調理ができる設計をしています。
商品はオーダーが入ってから一人前ずつ作りますが、素早く品質にムラなく提供することが可能で他社が簡単にマネできるものでもありません。
多種多様な野菜を大量に使うため、参入障壁の高い「ちゃんぽん」という分野において国産野菜の安定的調達と、ムラのないオペレーションを可能とした設備がリンガーハットの強みで、他者を寄せ付けない唯一無二の企業となっています。
リンガーハットの業績
2021年2月期の事業別売上構成比は以下のとおり。
78%と圧倒的に長崎ちゃんぽん事業の売上がシェアの大多数を占めています。
次に売上・営業利益・経常利益の推移は以下のとおりです。
コロナ前は健康志向の高まりも相まって順調に増収基調で推移し、利益も確保していましたがコロナ禍で大幅な赤字へと転じました。
直近2022年2月期の第3四半期時点での決算状況は、売上高25,031百万円(△1.8%)、営業利益△1,207百万円、経常利益1,468千円です。
営業外収益に時間短縮要請に係る時短協力金等を補助金収入として2,924百万円計上してることから経常利益ベースでは黒字を確保していますが、営業利益ベースでは赤字で、まだまだコロナの影響を受けている状況です。
売上高・客数・客単価の前年比率
コロナの影響で赤字へと転じたリンガーハットですが、売上高・客数・客単価の前年比率は以下の推移をたどっています。
客単価はコロナ禍でも大きな落ち込みはありません。2021年3月より若干の値上げや期間限定メニューの投入で100%を少し上回る形で推移しています。
客数は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の発出や自粛要請により大きく影響を受けています。売上高の前年対比推移も同様です。
客単価の推移と比較して客数及び売上高はコロナの影響により乱高下しています。
分析するにしてはあまりにも外部要因による変動が激しく難しい部分がありますが、リンガーハットもただ影響を受けているのではなく様々な取り組みで変化を遂げています。
最近の取り組み
コロナ禍で大変厳しい状況の飲食業界ですが、リンガーハットの最近の取り組みはどのようなものがあるのか見ていきます。
店舗展開
感染症拡大の長期化で既存店の客数低迷は前年比率を見て分かるとおり、厳しい状況が続いています。
業績回復が見込めない128店舗前後を退店(2021年2月期)するという厳しい状況で店舗数の推移は以下のとおり
そこで、コロナ禍でも郊外ロードサイドの店舗が比較的好調なことから、都心部及びフードコートからのリロケートを進めています。
また、客席の間隔を空けて感染症防止対策を徹底し、テイクアウトコーナーを買いやすく配置したり、新モデル店舗の開発を進めています。
店舗配置の見直し、オペレーション改善等により1店舗当たりの売上高を上げ、人件比率の抑制を図っています。
テイクアウトの強化
需要が高まるテイクアウトについては、テイクアウト専用メニューや新たな容器の開発、モバイルオーダーサービスの導入などを進めました。
長崎ちゃんぽんのちゃんぽん麺は購入後40分経っても伸びにくいテイクアウト専用麺の開発をしています。
また長崎皿うどんは購入後2時間経過しても60℃以上を保つ保湿性の高いテイクアウト用容器を使用しています。
実際に皿うどんをテイクアウトで注文したのですが、麺と具材がセパレートになっており、家についても具材は温かく、麺はパリパリでお店で食べているのと同じクオリティを家でも楽しめました。
ちなみに、家の近くにリンガーハットがない方もアマゾンやリンガーホームページより、冷凍のちゃんぽん等が売られていますので、自宅でも簡単にリンガーハットの味が楽しめます。
テイクアウトの強化により当初は5%だったテイクアウトの売上比率が24%まで高まっています。(2022年2月期上半期時点)
目標を40%に設定して、更なる専用商品の開発や認知度向上を図っているところです。
月例会を通じた作業改善
店舗・工場が抱えている問題や改善点について話し合う月例会の開催を徹底し、社員及びパート・アルバイト従業員全員で考えることで満足度向上に努めています。
その上で机上だけでいくら理論や理屈を議論しても早急な問題解決にならないという事から、現地で現物確認をスピード重視で把握することで早急な解決を図るよう取り組んでいます。
部門間の連携を強化し業務改善を行い、スピード感を持った組織体制で効率化に取り組んでいます。
このような取り組みの結果として、サービス産業生産性協議会が発表した「外食チェーン顧客満足度」(日本版顧客満足度指数)調査で4年連続1位を獲得しています。
まとめ
リンガーハットの売上推移や取り組み等、様々なIR情報を見てみました。
まとめ
- コロナ禍で大きなダメージを受けているものの、業績回復に向けて様々な取り組みを実践している。
- 店舗数は128店舗退店という厳しさはあるものの、新モデル店舗の開発を進め1店舗あたり収益拡大を模索。
- テイクアウトの比率が24%まで拡大
- 外食チェーン顧客満足度4年連続1位を獲得する等、新しい時代に対応している上場企業
個人的には主力商品である「長崎ちゃんぽん」の「麺増量無料サービス」が2021年3月から無くなってしまった事は悲しいですが、健康志向の高まりもあり「野菜がたくさん食べられるお店」というブランディング戦略は納得です。今後も大好きなリンガーハットを応援し続けたいと思います。
(カップ麺も地味におすすめ)